ホーム >> メッセージボイス

メッセージボイス

ご愛顧くださっているお客様からの素敵なメッセージです。










白木の曲げわっぱ - 小山織


97年に「引出物」と題するビジュアルブックを出版しました。以前から、柴田さんの曲げわっぱの山桜の樹皮の留めの造形の美しさに惹かれていたので、その本で柴田さんの小判弁当を紹介させていただこうと思い立ち、都内のデパートの展示会場に訪ねたのが柴田さんにお目にかかった最初でした。

日本人の感性や暮らしの形が凝縮して込められた道具が「白木の曲げわっぱ」であると教えていただき、その奥深い制作の姿勢に打たれたことを覚えています。

「ご飯を曲げわっぱにいれてごらん。冷やご飯がおいしく食べられるよ。」

以来、柴田さんの弁当箱は我が家のお櫃として必需品になっています。ところが、つい先日手がすべって高いところから取り落とし、蓋にひびがはいってしまい、がっくり。息子さんの昌正に展覧会でお会いしたときに「直せますよ」と言われ、心底ホッとしました。

長年使い込んだ弁当箱の内側はアクがでて黒ずんでいますが、杉だからこそなので全く気になりません。使いやすいように柴田さんならではの工夫ある造形は、古びても頼もしく、何ものにも代え難い。真新しい時の清浄無垢な姿はもちろん美しいですが、使い込んで古びたたたずまいに変わったときこそ、柴田さんの造形の力強さを思い知ることになるのです。これが愛用者としての実感です。

小山織(こやまおり)

インテリアスタイリスト。東京都区内に唯一残る作り酒屋に生まれる。雑誌社勤務を経てフリーランスに。日本の伝統的な生活文化に造形が深く、マスコミ、百貨店、イベントなどの活動を通して伝統と現代的センスが融合したライフスタイルの提案を続ける。

著書に『酒蔵の四季』(東京書籍)、『和の雑貨』『雑貨十二か月』『引き出物』(以上マガジンハウス)『INSPIRED SHAPES』(講談社インターナショナル)など。





まげわ一家 - 日野明子


柴田さんは実に良く実演をしている。その実演はこう言ってはなんだか『うまい』。職人は、はにかみ屋が多い中、柴田さんは途中までは黙々と仕事をし、ふとした拍子に、見入るお客さんに声をかけ始める。普通は作り方の説明になるだろうが、柴田さんは人生訓のような話しになる。

「ごはんはおいしい。おいしいとおかわりする。おかわりすると、会話が弾む。そうすると家庭も楽しくなるでしょう」という感じ。話しを聴くうちに、そっか、道具は用途だけじゃないんだ、と思うようになる。ふか〜く家庭の中まで考えている人が作った道具を使いたくなる。

ここまでだと、『うまい営業トーク』と思ってしまうが、三男坊の昌正さんにはじめて会って話しを聞いたとき完全にノックアウトされた。

「なんで仕事を継いだのですか?」「親父が試行錯誤をしながら仕事をしている姿をちっちゃいころから見ていて、絶対に俺も継いで親父を楽させたいと思ったんです。」テレも20代のワカモノがこんなことを言うのは、きっと曲げわっぱのお櫃に入ったおいしいごはんのお陰だろうと確信してしまった。骨の髄まで曲げわっぱを愛する一家。柴田さんの物を使わずしてどうする...という感じだった。

もっとも30歳すぎてからの昌正さんの技術もついてきて、お父さんにライバル心を燃やし始めたようだった。つくし弁当、デザイナーとワゲワシリーズ等々ヒット作を作り出している。二代目と伝統工芸としては歴史の浅い柴田慶信商店だが、先細りの曲げ輪の世界の救世主となるべく啓示を受けた一家とも取るのは大袈裟すぎるだろうか。

他の世界から入ってきたからこそ見える曲げわっぱの良さを柴田家はこれらからも広めてくれるだろう。

日野明子(ひのあきこ)

東京生まれ。クラフト関係のバイヤー、スタジオ木瓜代表。共立女子大学家政学部生活美術学科在学中に教授であった秋岡芳夫氏に影響を受ける。松屋商事(株)を経て、1999年独立し、スタジオ木瓜を設立。ひとり問屋業を始める。百貨店やショップと作家産地をつなぐ問屋業を中心に、素材を限定せず、生活用具の展示会や企画アドバイスなどを行っている。2004年から(財)クラフトセンタージャパンにも関わる。