昨年は新型コロナウィルスの影響で、いままで経験したことのない一年となりました。今もなお予断の許さない状況ですが、みなさまとともに無事に新年を迎えることができましたことを深く感謝申し上げます。本年も倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
あらためて二〇二一年は、暮らしを愉しむための道具として寄り添ってもらえるよう、努めて参ります。
昨年末の催事で、年配の男性のお客さまにこんな言葉をかけていただきました。
「やっぱり、子どもの頃から曲げわっぱでご飯を食べて育った人は、心豊かに育つなぁ」
そう言って、お弁当箱をご購入いただきました。
「もう、嬉しくてたまりませんでした。」
曲げわっぱでの暮らしが、日本ならではのめぐる季節のリズムとともに、みなさまのココロとカラダの栄養となっていき、さらに愉しく、嬉しくさせていくものと願っております。
柴田慶信商店は、これからもずっと丁寧に紡いでいく暮らしと成長に寄り添う道具をご提供して参ります。
二〇二一年も皆さまにとって素敵な年になりますように。
二〇二一年一月
柴田慶信商店
柴田昌正
大館曲げわっぱが昭和55年に伝統工芸品に指定された当時は好調な売れ行きでしたが、昭和60年に入るとプラスチック製品の台頭と生活様式の変化により需要の低迷が続きました。
なかなか売れない曲げわっぱを東京や大阪などへの販路拡大を目指すなかで新商品開発が盛んになり、曲げわっぱにウレタン樹脂塗装を施すようになりました。需要が伸びるにつれてあらゆる商品にウレタン塗装をするようになって天然杉の効能が活かされなくなりました。
天然杉が本来持っている吸湿性、芳香、抗菌効果によってご飯の味を生かすということよりは、汚れず扱いやすくスポンジと中性洗剤で洗えるような曲げわっぱになっていきました。
私自身もそのようなことに迷いを感じなかった頃、こどもの運動会に持参した、周りが羨むほど華やかな自慢の曲げわっぱに詰めたお弁当をいざ口に入れたらウレタン塗装の臭いで食べられませんでした。
自分で作っておきながらこの日この時までその臭いに気付かなかったのです。
そこで改めて本来の白木の大切さを痛感し、ご飯を入れる器は「白木」でなければならないと肝に銘じました。
白木の曲げわっぱはご飯の水分を程よく吸収し、冷めても美味しく、天然杉の香りが食欲をそそり杉の抗菌効果でご飯が傷みにくくご飯を詰めてから常温で一昼夜も痛まず持つほどです。
まずこのことを大切にし、素材と仕上げは曲げわっぱを使用する場面によって適材適所を常に考えながら、日々制作しております。
柴田慶信