曲げわっぱ「白木でなければならない理由」

大館曲げわっぱが昭和55年に伝統工芸品に指定された当時は好調な売れ行きでしたが、昭和60年に入るとプラスチック製品の台頭と生活様式の変化により需要の低迷が続きました。

なかなか売れない曲げわっぱを東京や大阪などへの販路拡大を目指すなかで新商品開発が盛んになり、曲げわっぱにウレタン樹脂塗装を施すようになりました。需要が伸びるにつれてあらゆる商品にウレタン塗装をするようになって秋田杉の効能が活かされなくなりました。

秋田杉が本来持っている吸湿性、芳香、殺菌効果によってご飯の味を生かすということよりは、汚れず扱いやすくスポンジと中性洗剤で洗えるような曲げわっぱになっていきました。

私自身もそのようなことに迷いを感じなかった頃、こどもの運動会に持参した、周りが羨むほど華やかな自慢の曲げわっぱに詰めたお弁当をいざ口に入れたらウレタン塗装の臭いで食べられませんでした。

自分で作っておきながらこの日この時までその臭いに気付かなかったのです。

そこで改めて本来の白木の大切さを痛感し、ご飯を入れる器は「白木」でなければならないと肝に銘じました。

白木の曲げわっぱはご飯の水分を程よく吸収し、冷めても美味しく、天然秋田杉の香りが食欲をそそり杉の殺菌効果でご飯が傷みにくくご飯を詰めてから常温で一昼夜も痛まず持つほどです。

まずこのことを大切にし、素材と仕上げは曲げわっぱを使用する場面によって適材適所を常に考えながら、日々制作しております。

柴田慶信

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