商品研修〜飯切〜|秋田本店の風景

昨日の投稿に続き、秋田本店の研修をレポートいたします。

この日のテーマは、寿司飯を作る《飯切》。
平成元年にグッドデザイン賞を受賞し、平成18年にはロングライフデザイン賞を受賞いたしました。 誕生時には《飯びつ》という名称で、樺綴じも現在のような鱗綴じではありませんでした。

上が現行の飯切九寸、下が旧デザインの尺サイズです。大きな特徴である割れ蓋は誕生時から変わりありません。
一枚板の大きな蓋だと、反りのリスクが避けられませんが、2枚に分けることが防止策になります。また、茶道具の平水指(写真下、慶信作)を参考にしています。

商品誕生には、2人の専門家の大きく関わっています。 一人は工業デザイナーの、秋岡芳夫氏です。グラフィックや各種プロダクトのデザインを手がけただけではなく、1980年代に日本各地で興った「一村一品運動」にも大きく関わっております。当時の大分県知事が提唱した「一村一品運動」は、地域の伝統的な資源や技術を活かし、一つの村に一つの特産品を作ろうという動きです。全国で地域おこしの気運が高まる中、各地のアドバイザーとして奔走したのが秋岡先生でした。

そして、秋岡先生の協働者が、木工家の時末辰夫氏です。自ら改良した木工用の「ろくろ」を携え、各地で実践指導をしてきました。大分県立の日田工芸指導所で技術を習得したのち、仙台にて秋岡先生と出逢いました。

1980年代、大館曲げわっぱ協同組合が意匠開発の事業に取り組む際、秋岡先生と時末先生を招致しました。研修会の実施場所は、当時は市内清水町にあった、柴田慶信商店の工房です。 専用の機械もない中、既存設備の活用などを経て、ろくろの技術を高めた結果、生まれたのが飯切、おひつに欠かせない技術「隅丸加工」です。当時、曲げわっぱにろくろ技術を採り入れたのは、これが初めてです。

ごはんを余すことなくいただけるように、お客様のそんなご要望をようやく形にすることが出来ました。また、手に馴染む柔らかいフォルムも、ろくろ技術習得の成果です。また、隅丸部分が乾燥による隙間が出にくくなっています。 お二人からは技術のみならず、その先にある、ものづくりの姿勢を学び得たように思います。

岩手県洋野町の大野木工や、北海道置戸町のオケクラフトも、お二人の指導により生まれたものです。その足跡を振り返る資料として、研修後には秋岡先生の回顧展の図録を、社員で輪読しました。

本年より始動の《源平》も、大学で教鞭を執る専門家にご指導を仰いで生まれたものです。知ること、学ぶこと、その経験と蓄積の出逢いが、自分達を大きく前進させるとの信念を持ち、ものづくりに励む所存です。

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