商品研修〜つくし弁当箱〜|秋田本店の風景
本日のテーマは、つくし弁当箱。
このお弁当箱誕生は20年近く前、伝統工芸士・柴田昌正の第一子誕生にさかのぼります。この子の成長に合わせて使えるような白木弁当箱を作りたいと考え、木製だけではなくプラスチックなど他の素材も含め、さまざまな弁当箱の形を研究しました。
ろんとした楕円形が二段重なった白木弁当箱。食べ終わると上段を逆さにすることで、下段に収納可能な入れ子式です。
まだ食が細い頃には上段だけを、もっと食べる量が増えたら二段重ねて使えるように、とお子様の健やかな成長をイメージして作った弁当箱です。収納スペースを取らない効率的な入れ子の仕組みは、現代の生活様式に最適と考えております。この構造を弁当箱に用いることで、幼少時から大人になるまで、末永く愛着を持ってご使用いただけます。お弁当箱に冠したのは、柴田の愛娘「つくし」ちゃんの名前です。
二段弁当箱の上段底には、鍔(つば)板が付いています。ない方がすっきりして見えるかもしれません。しかし重ねを安定させ、下段の中が見えないようにするためにも鍔板は必要です。工業製品のように隙間がないほどスタッキングさせるのではなく、湿度によって木が伸縮することを見越し、ほどよく緩さを作るようにしました。
極力鍔板を目立たせず、バランスよく仕上げるため、板蓋と鍔板、その下の重ね部分が同程度の厚さを心掛けています。マニュアルがない手工芸の現場、仕上がりイメージの共有はマニュアルではなく、完成品を実際に観察することが大切です。秋田本店の2階にはディスプレイされている商品サンプルは、たまに職人が拝借して製作の参考にしています。
写真は2005年の雑誌『天然生活』。デビュー間もないつくし弁当箱をご紹介いただきました。思わず顔がゆるんでしまう、愛らしいツーショット!
お弁当箱誕生のエピソードを店頭で説明させていただくと、目を細めて聞いてくださるお客様が多く、とてもあたたかい気持ちになります。
親から子へ、子から孫へ。柴田慶信商店の思いが凝縮されたつくし弁当箱です。