曲げわっぱが柾目板を使う理由
大館曲げわっぱは伝統的に、杉の柾目板(まさめいた)を使って作られております。
柾目とは、木材の中心付近を切ったときに表面に現れる、「直線的」な木目のことです。白い夏目と硬い木目が繰り返され、樹齢が刻まれていきます。自然が作る優美な柾目は、曲げわっぱの特徴の一つです。
また、余分な水分を吸収し、食材が汗をかくことを防ぐのも、柾目板を使う利点でございます。
本日は大館曲げわっぱが柾目板を使う理由を、さらに詳しくご説明いたします。
秋田にはもう一つ、杉材を使った伝統的工芸品として、「秋田杉桶樽」がございます。
大館曲げわっぱと同様に、日常生活に欠かせない容器として、長い歴史を持つ木製品です。
桶樽を例に、材料のご説明をさせていただきます。
桶は杉の柾目板、 樽は板目板、 と製品(用途)によって、材料が使い分けられております。
丸太から木材を切り出すときの角度、方向により、板の木目に違いが出ます。
柾目板
年輪の目を断ち切るように、直角に近い角度で切り出す
板目板
年輪の目に沿うように、接線方向に切り出す
木目の見栄に加え、水分を含んだときの変化の異なりが、木材の使い方を決めます。 桶や曲げわっぱは長期的に液体を保存するのではなく、一時的に入れる、もしくは余分な水分の吸湿性を活かすため、柾目板を使用いたします。
柾目板の特徴
・水分変化に伴う寸法変化、狂いが少ない
・水を適度に吸湿してくれる
・使用中は部材が吸湿するとともに膨張
・使用しない間は乾燥につれ収縮
これに対して、板目板は吸水率が小さくなります。樽は材が常に水分を含んだ状態で使用しますので、寸法の変化はさほど重要ではございません。
味噌や酒、醤油など常に液体を大量にためた樽は、場合により移動するもの。内容物を染み出させないことの方が重要になります。
余談ではございますが、 日本の樽は板目板ですが、西洋の樽は柾目板が使われております。
大館曲げわっぱ、秋田杉桶樽に限らず、 伝統的な木製品は板の特性を見極め、適材適所で使うための知恵が、技術とともに継承されたものといえます。
皆様もぜひ、お手元にある曲げわっぱの柾目をじっくりとご覧くださいませ。