特製めしびつ  ~天然秋田杉の表情~

柴田慶信が現代の名工として表彰されたことを機に企画製作した《特製めしびつ》(3合用)が2月4日から販売予定です。

ある日の製作風景をお届けいたします。

製作現場、慶信の視線には時々鋭さがあり、その様子を見ると少し緊張してしまいます。しかし、この日の眼差しは穏やか。 専用の部屋で乾かしているガワ(側面となる板)を手に取り、乾燥の具合を確かめています。この確認はその後の接着工程に進むための大切な作業。手際良く確認し戻す…一連の動きには不思議とリズムが感じられるような気がしてなりません。

職人に声をかけ始めました。めしびつの仕上げについて説明をします。

木の表情を見て、手になじむような質感を大切に
この材料は仕上げることで、人肌のような温かみが出るんだよ

慶信がろくろの指導をしている相手は、秋田未来の工芸士の認定を受けている佐藤江里子。ひたむきに取り組む彼女には、慶信も一目を置いているとのこと。

今度は工場の2階に上がり、手仕上げと樺綴じの工程を確認しに行きました。 手仕上げで特に大切にしたい、隅丸加工の仕上がりを入念に確認します。


定番品のおひつや飯切などにも施される隅丸加工は、お客様からのご要望を3年かかって慶信が実現したもの。おひつの隅にご飯粒が詰まらないようにしてほしいというお声が、誕生のきっかけとなったこの加工のために、工業デザイナーの秋岡芳夫氏と木工家の時末辰夫氏に指導を受けました。

「この隅を丸くする方法は、前の工場に先生が来てな…」

慶信の指導はたまに、昔話のセット付き。少し冗談を交えるものですから、緊張がほぐれた職人にも笑みがこぼれます。

《めしびつ》を飾る大切な意匠「両鱗綴じ」。古い曲げわっぱには、魚や蛇の鱗を模して山桜の樺(木皮)が綴じられています。慶信は収集した曲げ物にある数多の古き「鱗」に学び、自らの技術に落とし込み、自社製品の意匠性を高めてきました。慶信が考案した、鱗が向かい合う「両鱗綴じ」には、古来より模様に込められた「厄除け」の意味合いがあります。

新旧の知恵、技を取り入れてきた慶信が、作り手として晩年の作と考える《めしびつ》。香り立つ天然秋田杉の表情をじっと眺めていると、慶信のある言葉を思い出します。

現代の名工としての表彰が決まった際に、慶信が受けた取材にて「大館曲げわっぱは自身にとってどんな存在か」と聞かれた際の言葉です。

「私の生きる道であった そう思っている」

めしびつに凛と伸びゆく、真っ直ぐな柾目。その、ひと筋、ひと筋に、慶信の拓いてきた道が重なります。

《めしびつ》は来月より、柴田慶信商店のオンラインストアと直営の4店舗にて順次販売を予定しております。 商品ページは現在公開準備をしておりますので、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。

*1月31日更新*
《特製めしびつ》販売ページ

*販売開始前は「売り切れ」の表示が出ております。

 

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