作り、繕うこと ー親から子へ、子から孫へー

今春、お客様からおひつをお預かりしました。
聞けば35年ほど前にお買い上げいただいたというもの。

現在のおひつとはデザインが異なり、サイズも「八寸」(直径約24cm)と大型です。販売開始(1985年)当時は「飯櫃」という名前での販売でした。大きな一枚板を曲げて作ったおひつ、内底には自慢の「隅丸加工」が施されています。
この飯櫃は1989年にグッドデザイン金賞を、「おひつ」とした商品名やデザインの変更を経て、2006年にはロングライフデザイン賞をいただきました。

長年ご愛用いただいていたものの、底板が抜けてしまったとのことで、お客様から修理のご依頼をいただきました。

おひつが大館の工場に届いた時、おひつを見た慶信はと驚いた様子。言葉数は少ないながらも、ポンポン、と孫に触れるごとくおひつを撫でていました。


修理は慶信の実息であり、伝統工芸士の柴田昌正が担当いたしました。
おひつの底板を交換する際には、元々の底板を取ってから、本体の内側にはめ込むような形で新たな底板を入れ、「切り輪」と呼ばれるパーツで補強をいたします。


自社製品を証明する「慶信作」も入れ直し。


仕上げとして、元の風合いを残しつつ全体的に磨きをかけ、抜けていた樺も新たに綴じ直しをいたしました。

修理の完了をご報告した際、いずれご自身のお子様方に譲りたいと、ありがたいお言葉をお客様からいただきました。


親から子へ、子から孫へ

ご愛用の曲げわっぱを修理させていただくことは毎回貴重な経験です。自分たちが作ったものに再会出来ること、ひとつの物語を曲げわっぱに与えていただけたことへの感謝の気持ちが湧き上がります。 作り、繕い、受け継がれるおひつ。 工房からの2回目の旅立ちを迎えたおひつを誇らしく感じました。

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