おにぎりとわたし(飯島奈美様)
曲げわっぱが主人公の物語
2016年の秋、秋田の柴田慶信商店さんに初めて伺いました。曲げわっぱを作る工程を見せていただき、樹齢150年以上の天然秋田杉の生育から木を切り、乾燥させ、板にする…。商品になるまでの流れを教えてもらいました。それは気の遠くなるような曲げわっぱのお弁当箱が主人公の物語のようでした。「薄い板になったあとは職人さんに丁寧に作られたとさ。」と、まだまだ売られたあとのお話も続きそうで想像が膨らみました。そのあとは、店に並べられた美しい道具やわっぱに感激していろいろ購入させていただきました。
ソウルフード、おにぎり
私はフードスタイリストをしています。担当した映画「かもめ食堂」(2006年)はフィンランドで撮影しました。劇中で日本人のソウルフードとしておにぎりが登場します。
最近では、映画「真実」(2019年)の撮影でフランスに行きました。劇中料理以外にも是枝裕和監督に依頼されて、スタッフにケータリングを作ることになり、おひつも飯切りももちろん持参しました。塩むすびや鶏の炊き込みおにぎりを合計200個くらい作って、フランス人スタッフにも日本のおにぎりは大好評でした。飯切りの美しい木目や形にも興味津々のようすでした。
炊きたてのご飯をおひつに入れて10分ほど落ち着かせて、手に少しの水と粗塩をつけて馴染ませます。(ちなみに大きさは、おかずがたくさんある時は大、中、小さめと、食べる方のお腹の具合で選んでもらえるようにしています。)
ご飯を手にとり三角にそっと整えます。力を入れないのが大事です。おにぎりがやわらかいので飯切りに横に寝かして並べ蓋をします。
あたたかいご飯の湯気で飯切りの中のおにぎりは保湿され、しばらくして蓋を開けるとツヤツヤになっています。寝かしている間に米どうしがしっかり着くので持ってもくずれません。口の中でほろっとほぐれるおにぎりです。
道具への感謝
私が料理をするときに調理道具が無くてはなにも作れません。おひつ、包丁、まな板、鍋など。そしてそれをつくっている方々にいつも感謝しています。おにぎりは特に作ることが多いので、おひつと飯切りは愛着がわいて手放せません。柴田慶信商店さんのおひつや飯切りは内側に角がないので、米が詰まることもなくて洗いやすいです。使い始めて6年以上経ちますが、まだまだキレイで元気に活躍しています。