ぼくたちと曲げわっぱ(カタカナ 河野純一様①)
カタカナ開店のきっかけ
僕は東京自由が丘で「日本のカッコイイを集めたお土産屋」というコンセプトでカタカナと言う雑貨店をやっています。
2010年に開店したので、来年の2025年には15周年をむかえます。
サラリーマンだった僕が、雑貨店を開店したきっかけの一つが、この曲げわっぱなのです。
アパレル業界の欧米大好き人間がなぜメイドインジャパンに惚れたお店を作ったかのか?
妻に贈った木のお弁当箱
いまから20年ほど前のこと。
職場結婚した妻が病にかかり、薬の副作用で味覚を失い食欲がなくなってしまいました。
薬を飲むために、胃に何か入れないといけないので食べ物を食べる。
それは食事ではなく作業のような時間でした。
おいしいモノが大好きな彼女と、笑顔で食事をすることがその頃の僕の願いとなっていたのです。
ある記念日に「なにが欲しい?」と聞くと「曲げわっぱが欲しい」とリクエスト。当時の僕は曲げわっぱという言葉を知らず、それが木のお弁当箱なのだとはじめて妻に教えられました。
銀座の百貨店で、曲げわっぱを見たときの正直な感想は「お弁当箱なのに良い値段するんだなぁ、、」いっしゅん躊躇はしましたが、店員さんのアドバイスで小判型のお弁当箱を買い妻にプレゼント。
その次の日、さっそく妻は曲げわっぱにお弁当をつめて職場に行きました。
帰ってきてお昼ごはんは食べれたかと聞くと、妻は「全部食べれた」。そして「おいしかった!」と笑って言ったのです。
「えぇっ!味が分からなかったのじゃないの?!」びっくりする僕にもう一度「おいしかったよ。」と。
料理の世界で「器で味が変わる」と聞いたことはありますが、視覚によることが多いはずです。この木のお弁当箱は、見た目じゃなくって本当にお弁当を美味しくしてしまう。
信じられませんが、本当に経験した出来事です。
日本のいいモノ
それ以来、日本の伝統的工芸品や古くから作り続けられているモノは、何か今も残る理由があるのでは?
そう思い日本のモノを見つめ直すと、光りかがやくモノたちがあることに気がつきました。
日本全国をめぐりながら、いいモノさがしの旅を続けています。
僕の人生を変えたモノの一つは、この「曲げわっぱ」です。